■質問者
小泉進次郎さんの小泉構文と呼ばれるものはSNSで話題になっていますが
ベストセラー作家の松尾先生的にはどう感じますか?

■松尾先生
小泉進次郎さんも面白いとは思いますけれどそこに乗っかるヤフコメの人たちの大喜利が楽しいです。
今の総裁選でもし仮に小泉進次郎さんが総裁になり
首班指名で内閣総理大臣になったら小泉構文の本が出るのではないかと思います。

■質問者
小泉構文のネタ本があれば10万部くらい売れそうですね。

■松尾先生
誰が著者になるんだろうね(笑)
小泉さんは出さないと思いますけどね(笑)
それが許されるかは別にして彼の言葉にはみんな注目しているのでしょう
いい意味ではないとは思いますが
ちなみに父親の純一郎さんは本当に言葉に力があったと思います


■質問者
これまで政治家で文章や言葉が上手い人はいましたか?

■松尾先生
田中角栄です。

■質問者
田中角栄さんはどこがすごかったのですか?

■松尾先生
田中角栄の言葉はたくさん出ています。
田中角栄さんは政治家で一番初めに本を使い影響力を身につけ総理総裁まで上り詰めた人です。

田中角栄さんは最初の総理総裁選挙の時に福田赳夫さんの対抗馬で出てきました。
その時、福田さんは東大工学部卒業で大蔵省というピカピカのキャリアでした。

対する田中角栄さんは新潟から出てきて不動産屋の社長で出世するぞと出てきました。
自分では中卒という肩書きで出てきました。

当時の田中角栄さんは真っ向勝負では当然福田さんに勝てないと思い秘策を練りました。
その秘策が日本列島改造論という本です。

1972年の自民党総裁選の前月に極秘で緊急出版したことです。
もちろんその本は当然田中角栄がペンを走らせて書いたわけではなく
彼が色々な所で演説したりインタビューを受けたりしたものをゴーストライターが書きました。

著者は田中角栄ということにして自分が総理総裁になったら日本を変えるぞと
東京と地方の格差をなくして地方の貧しい人にお金を配り人を流す
東京ばっかりずるいだろうという本を書きました。

実際の内容は東京から地方に新幹線と高速道路を伸ばして
交通網を発達させ人と金の流れを作ることです。

この本を僕は当時買いましたが500円でした。
今はプレミアが付いて5,000円くらいします。

当時の人は田中角栄さんは中卒と聞いていたのに
本が出せるのかと本当に頭がいいではないかと驚きました.

まして我々地方の貧しい人に
「お金を配ってくれるらしいぞ」と
「東京に行きやすくしてくれるらしいぞ」と

東大卒の福田さんが総理になっても時代は変わらないし俺たちは変わらないだろうと。

当時1970年代はほとんどの人が高卒で中には中卒の人も多かったです。
そうすると自分たちの代表だということが田中角栄さんに重なったのでしょう。

今ならインターネットやSNSがあり色々な情報発信ができます。
当時は情報発信できるのはテレビラジオ新聞雑誌でした。

その中で自分から発信できるのは書籍だけでした。

テレビラジオ新聞雑誌はちゃんとしたメディアがあり
場合によってはインタビューを歪めてしまいます。

当時は福田さんが勝つと思われていたから
田中さんのインタビューを取っても福田さん有利にしてしまうかもしれません。

しかし、自分発信の書籍ましてこれは自費出版なので自分の思ったことを書けます。
田中さんに有利なことを書けます。

もちろん自費出版とはいえお金を持っている田中角栄さんだから流通をかけられました。
今で言う3,000万円くらいをかけて書店に流しPRをしたからベストセラーにもなりました。

そして、田中さんが総理総裁になり本はやはりすごいと言われました。
1冊の本が中卒を日本で1番偉い人にしたのです。

この成功事例からその後政治家はみんなこぞって本を書くようになりました。
その第1号が田中角栄さんという話です。

まさに日本列島改造論のおかげで総理総裁まで上り詰めた男です。
後の活躍は皆さんが知っている通りです。