■質問者
松尾先生
もし商業出版して自分の本が出た場合、ほとんどの人は本を出すのが初めてですよね。
その際に爆発的に本を売るマーケティング手法はありますか?

■松尾先生
まず本が出たらすぐに動くことです。
最初の1週間が勝負です。

特にビジネス書や実用書は光り物と言われます。
光り物というのは、魚の光り物がすぐに腐るように足が速いということです。

それと同様にビジネス書や実用書は、最初の1週間に書店に置かれて1冊も売れないと、
最初平積みで10冊置かれていたものが1冊も売れなかった場合、その平積みは回収され1冊だけ棚に置かれておしまいです。

逆にこの1週間の間に3冊や4冊売れると、書店員は「この本は売れる」と判断し、バックヤードから本を補充します。
また10冊になり、さらに3冊4冊売れると、バックヤードの在庫がなくなり発注をかけます。

発注をかけると次は10冊ではなく20冊発注をかけます。
そうして様子を見ながら1段だった平積みが2段になったりします。

それを繰り返すと今度は話題の新刊コーナーに置かれたりするのです。
いわゆる本の陳列面積が増えていきます。

これが最初の1週間から2週間で始まります。

■質問者
書店に行くとレジ付近でフェアをやっていますよね。
あれは1週間で売れた本が注目されて、そこに移動するというパターンもあるのですか。

■松尾先生
そのパターンと、出版社がワゴンを買い取りワゴンセールをすることがあります。
そのワゴンは例えば2週間で15万円ほどします。
基本的にはビジネス書や実用書の場合、著者が15万円を払って2週間置かせてもらうのです。

たくさん置いてあるといくらか売れますし、売れてくると今度はランキングに入ります。

例えば紀伊國屋書店新宿のビジネス書で第8位のようになると、ランキングの棚に本が置かれます。
すると紀伊國屋書店のランキングが他の店舗にも共有され、本店で売れているならと地方の店舗でも仕入れてくれます。

そういう流れです。

■質問者
そうなのですね。

■松尾先生
本は本当に光り物で、1週間の勝負で命運が決まります。
なので本が出たと喜んで1週間何もしなかったら、次の週には本が減っているか、場合によってはなくなっているかもしれません。

■質問者
では本が出て嬉しくてSNSにアップなどしていたら、翌週にはもう失速しているのですね。

■松尾先生
なので本を出すのに慣れている人は、最初の1週間は友人や親戚にお願いしたり、自分でも書店に行って1冊ずつ購入します。
そうやって地道に冊数を減らしていくことで、書店員に補充をしてもらうのです。