■質問者
松尾先生、質問が来ていました。
「出版詐欺に遭いました。どうしたらいいでしょうか?」

■松尾先生
その詐欺が具体的にどのような手法だったかわかりませんが、
商業出版のプロからすると、
出版社と名乗るところから「ブログやホームページを見た」と言って、
出版の声がかかるケースの95%は、詐欺とは言わないまでも営業です。

笑い話のようですが、僕にも定期的に来ます。
「松尾社長、出版して人生を変えませんか」というメールが来るのです。
うちのホームページを見れば、その仕事をしているとわかるはずなのですが、
ということは、もう無作為に送っているのでしょうね。

■質問者
確かに。これはどういった系統が多いのですか?

■松尾先生
一番多いのはこういう例です。
「社長のコンテンツが素晴らしいので、ぜひ弊社から出版してほしい」と言われ、
まずは「打ち合わせに来てください」と誘われます。

打ち合わせに行くと、
「出版不況なのはご存知ですよね」と言われ、
「ですがどうしてもこのコンテンツ、この社長の本を出したいので、
500万円の本を作りたい。弊社が250万円を負担するので、
残りの250万円を負担してください」と。

お互いに出し合う形を提案され、
さらに「印税もきちんと出します」という言い方をします。
つまり、いわゆる共同出版のような形を提案するのです。

ですが実際は150万円くらいで粗雑な本を作り、
100万円の利益が出版社に出ます。
しかも流通しないことが多いのです。

■質問者
そういうパターンが多いのですね。見抜く方法はありますか?

■松尾先生
もし僕でしたら、こう聞きます。
「商業出版ですか? 自費出版ですか? それとも共同出版ですか?」

「商業出版ですよ」と言われたら、
「ということは、私に印税が入り、なおかつ1円も払わないですよね?」と確認します。
そうすると「いや、実は……」と必ず言ってきます。

なのでポイントは2つ。
「私がお金を払うことはないですよね?」
そして「印税は何%出ますか?」
この2つを聞けば、商業出版か自費出版かがわかります。

■質問者
なるほど。「出版したい」と誘われて行くと、「費用を出してください」と言われるのですね。

■松尾先生
そうです。ほとんどがそのパターンです。
ただし、例外があります。
それはインフルエンサーの場合。
YouTubeで100万人登録者がいるような人は、本当にスカウトされます。

そうでもない限り、いくら事業が儲かっていても、
上場していたとしても、経済ニュースで取り上げられるような企業でなければ、
出版の声がかかることはまずありません。

■質問者
他に気をつけるケースはありますか?

■松尾先生
出版スクールも注意が必要です。
「うちは100%出版できます」と謳っているところは、
自費出版の会社や出版プロデューサーと組んでいる場合があります。

その場合、
1000部程度の小冊子のような本を作ることになります。
表紙はフリー素材のような風景写真だったりして、
質の低い本が作られるケースも多い。

僕からすると、それも情報弱者を狙ったビジネスです。

■質問者
電子書籍の出版も増えていますよね?

■松尾先生
はい。ただ、僕はいつもこう言います。
「あなたは今までビジネス書や実用書の電子書籍を何冊読みましたか?」

ほとんどの人は「読んだことがない」と答えます。
自分が読んだことのない本を書いてどうするのですか。

「僕は電子書籍しか読まない」という人も、
それは紙の本もある電子書籍のことです。

■質問者
なるほど。やはり出版には「憧れ」や「ブランド」のイメージがあるのですね。

■松尾先生
「電子書籍が伸びています」というデータを出してくるの人がいますがあれはコミックのデータです。

コミックは電子で読む人が多いので、
「ほら、電子書籍が増えています」「もう紙の本は古いですよ」と言ってきますが、
それはコミックの話。
ビジネス書や実用書とは別です。

■質問者
要するに「出版の情弱ビジネス」が多いということを覚えておけばいいのですね。