■質問者
松尾先生!出版は商業出版と自分でお金を払わなければいけない自費出版があると聞きました。
自費出版はやはり高いのですか。

■松尾先生
自費出版の場合は書店に並ばないためその本を自分で抱えなければいけません。
だから自分で手売りをするので惨めですよね。

■質問者
1000万円を払ってやっと自分の本が出せるという感じですね。
ちなみに安いものだとどれくらいですか?

■松尾先生
安くて150万円や200万円くらいです。
100万円以下の自費出版はないでしょう。
もしあるとすればそれは小冊子になってしまいます。

■質問者
自費出版はやはり書店に並びにくいのですか?

■松尾先生
書店のビジネスモデルがあり書店がどうやって利益を出しているかというと
置いた本が売れると1冊あたり本体価格の2割から3割がもらえます。

そうすると当然売れる本から書店に並べたいわけです。
例えばジャンプやアイドルの写真集 ビジネス書でも売れ筋を置きます。

自費出版はもともとお金をかけて作っていないため
例えば装丁というカバーデザインも著作権フリーの写真や無料画像を使っています。
ひどい場合は自分で描いたようなイラストレーターで作成したものもあります。

そうすると明らかに売れません。
また書店員もレーベルで判断します。
例えば幻冬舎ルネッサンスと書いてあれば自費出版だとわかるので
その本は最初から弾いてしまいます。

書店に置かれなければ当然それは戻ってきてしまいます。
自分で売りさばかない限りは日の目を見ないので借金の在庫を抱えているようなイメージです。

例えば3000冊の在庫を抱えてどうしましょうという状況になります。

■質問者
3000冊というと段ボールでかなりの数になりませんか?

■松尾先生
とんでもない量です。
500冊でも段ボールでいっぱいになるのでその6倍です。
しかも本は重たいです。

さらに自費出版の紙は粗悪なためもっと重たいでしょう。

■質問者
そうなのですね。

■松尾先生
商業出版は印税がもらえるのに自費出版は印税ももらえません。
書店にも並ばずなおかつ在庫を抱えなければいけません。
ですから誰が得をするかというと自費出版の制作会社だけが得をするビジネスモデルです。

■質問者
なるほど。
では本当に著者が出版したいという社長などの自尊心をくすぐるビジネスでもあるのですね。

■松尾先生
失礼な言い方かもしれませんが情報弱者ビジネスです。

■質問者
確かにいつか出版したいと掲げている社長はとても多いです。

■松尾先生
いますね。
我が人生に悔いなしというような自分史や写真集を出したい人です。

「私はこんなに苦労をした昔は経理部長にお金を盗まれた。」
というようなことを書きたい人がいますがそんな本を誰が読むのでしょうか。

■質問者
やはり自費出版で出した自叙伝はつまらないのですか。

■松尾先生
それが孫正義さんの自叙伝であれば読む価値もあります。
ユニクロの柳井さんの自叙伝であれば学ぶところもあるでしょう。

しかし1億円か2億円程度でたまたまうまくいった地方の零細企業の社長から
得るものがないとは言いませんがより多くの人はそこまで知りたくありません。

自費出版は書きたいことが書けるのです。

書きたいことが読者の知りたいこととは限らないため
どうしても自慢話のオンパレードになってしまいます。

■質問者
なるほど。
本当に自費出版で書かれている内容は書きたい自慢が詰まっているのですね。

■松尾先生
これが商業出版であれば編集者が読者は納得しないと指導します。

「社長の言いたいことはわかりますがそうではなく
どうして成功されたのか再現性のあるノウハウを書いてください」と書き直しをさせます。

しかし、自費出版はスポンサーが著者なので好きなように書かせなければいけません。
好きなことを書けるからこそ自分の言いたいことのオンパレードになってしまいます。

■質問者
そういうことなのですね。
つまり著者がお客さんで読者目線ではないということですね。
編集者からすると接待のようなものですね。

■松尾先生
接待で「素晴らしい文章ですね」と言って
もう1冊続編はどうですかと勧めるのです。

そうすると自費出版会社はさらに500万円や1000万円の売上が立ちます。

■質問者
そういうことなのですね。

■松尾先生
自費出版を何冊も出している人がいますので作家気分が味わえて気持ちいいのでしょう。

■質問者
確かに。
自費出版は絶対に避けた方がいいですか?

■松尾先生
私は自費出版をお勧めしません。