「出版企画書」
編集者はここを見ている

出版企画書は誰に向けて書くのか

「半径数メートルの読者」は独りよがり

当たり前のことを言いますが、出版企画書を作成するときは原則として読者を意識しなければなりません。
自分の伝えたいことを書き連ねたところで、読者が読んでくれなければ意味がありません。読者不在の出版企画書に対し、編集者が興味を持つはずがありません。
「どんな人の悩みを解決するか」「どんな人の役に立つか」が明確になっていて初めて、出版企画書は完成したことになります。
「読者を意識することが大切」というアドバイスをすると、出版希望者からこんなコメントが返ってくることがあります。
 
「それなら大丈夫です。私が主催したセミナーの参加者に出版企画書を見せたら、みんな『こんな本があったら必ず買う!』と言ってくれました。私は彼らに向けて書きます」
 
「私のまわりはみんな読みたいと言っている」と主張する人は少なくありません。しかし、それは知人やファンだからそう言っているケースが多く、気を遣われているだけかもしれません。数人、十数人の声を根拠に、「みんなが読みたいと言っている」と主張するのは無理があります。
それは、「うちの母親の料理は誰が食べてもおいしいと言うに決まっている」「わが家のペットは世界でいちばんかわいい」と言い張るのと何も変わらず、独りよがりの企画になってしまいます。
 
あなたが意識しなければならない「読者」は、半径数メートルの距離にいる知人ではありません。あなたとまだ面識のない数千人、数万人の人が本当の「読者」です。内輪ウケする出版企画ではなく、多くの人に読んでもらえるような出版企画に仕上げなければなりません。