あなたの中に眠っている
本のネタを探せ

自分の過去を棚卸しする

プロフィールは深掘りするほど味が出る

自分のプロフィールを作成するとき、多くの人は大学卒業後の職歴を書きます。「○○大学卒業後、××会社に入社し、△△事業部に配属……現在は□□株式会社の経営者を務める」と時系列で記述していくのが一般的です。
もちろん、これらはプロフィールに必要不可欠な情報ですが、生まれてからの自分のルーツまでさかのぼると、プロフィールに味が出ます。
 
たとえば、拙著の『1万人を見てわかった起業して食える人・食えない人』(日本実業出版社)の私の著者プロフィールには、次のような記述があります。
 
「父方の祖父は戦前、満州にて百貨店、自動車販売会社を経営。父は地元埼玉県にて40年続く建設清掃会社の創業社長という起業家の家系に育つ。大学卒業後、業界大手の総合人材サービス企業を経て、コンサルタントとして独立」
 
祖父、父親がともに起業家であることをあえて記すことによって、「起業家の家庭に育った」という印象を読者に与えることができます。「起業」がテーマの本ですから、起業家のDNAを引き継いでいるというイメージはプラスに働きます。
 
すぐれた著者プロフィールには、「その本の著者であるべき理由」が示されています。なぜ著者がこの本を書くのか、つまり本のテーマと著者の経歴に整合性があればあるほど説得力が増し、企画書も通りやすくなります。
 
第1章で『買い物依存症OLの借金返済・貯蓄実践ノート』(合同フォレスト)を出版した西村優里さんの例を紹介しましたが、その著者プロフィールには、「幼少期の虐待経験の反動によって、学生時代から高額商品をクレジットカードで衝動買いするようになる」という記述があります。
 
「幼少期の虐待経験」というのは本来、表には出さないのが一般的ですが、虐待経験で家庭内で追い詰められた著者が、大学生になって自由を手に入れた途端、借金を重ねて落ちていく過程をあきらかにすることで、著者がどれだけの苦難を乗り越えて、借金返済と貯金の本を執筆したのかを読者に想像させることができます。そして、このテーマを書くのにふさわしい著者であることが、一発で読者にも伝わります。
 
出版企画書でも、プロフィールを通じて「その本の著者としてふさわしい」ことを編集者に伝えることが大切です。「この人には、このテーマで書いてほしい」と思わせることができれば、出版に大きく近づきます。