書いた本を売るために
大切なこと

2冊目の出版ができる人、できない人

著者は売る努力をしなければならない

本ができた時点で満足してしまう人がいます。しかし、それは独りよがりの自己満足でしかありません。
先に述べたように、出版社はあなたに数百万円の投資をしています。売れなければ版元が損することになります。
本が売れなければ、あなたにもマイナスの影響が及びます。本が売れずに初版で終わってしまえば、限られた人にしか本を届けることができませんし、その波及効果も限られます。本がビジネスにつながる可能性が小さくなりますし、メディアに注目されることもありません。
また、最初の本が売れなかったということになれば、「この人は売れない著者」というレッテルが貼られ、2冊目、3冊目の本を出版するのがむずかしくなります。
過去20冊以上の著書を出版し、お金をテーマにしたベストセラーを出し続けている田口智隆さんは、日頃から「本を出版し続けたいと思っているなら、何が何でも1冊目の著作を売らなければならない」と主張しています。
処女作である『28歳貯金ゼロから考えるお金のこと』(中経出版)がベストセラーになったからこそ、2冊目、3冊目の執筆依頼が相次ぎ、コンスタントに著作を発表し続けることができている、というわけです。
 
もちろんノウハウを出し惜しみすることなく最高の一冊をつくらなければなりませんし、売るために自分の人脈を駆使したり、セミナーを開催して本を販売したりと、できることはすべて実行に移す覚悟が求められます。
 
もし処女作が売れずに重版がかからなければ、出版社は投資額を回収するのがむずかしくなります。2度、3度と重版を重ねることで、初めて出版社は利益を出すことができるのです。
したがって、「この人の本は売れない」というイメージがついてしまえば、どんなにいい企画でも通りにくくなります。出版社の編集者は「どの本がどのくらい売れているのか」をPOS(販売)データで確認できますから、いくら「前作は好評だった」と言い張っても、リアルに売れ行きがわかってしまうのです。1作目は出版できたけれど、2冊目以降の依頼がこなかったという著者は山ほどいます。
私はこれまで、世の中のみんなが知るような大ベストセラーを出した経験はありません。それにもかかわらず、22冊もの本を出し続けることができているのは、処女作が9刷のヒット作となり、業界でそれなりに話題となったこと、そして毎回とは言いませんが、定期的に重版のかかる本を書いて出版社の売上に貢献しているからです。
 
出版を志している人は、自分の本が「大ベストセラー」になるのを夢見ているものですが、ベストセラーになるには少なからず運も必要です。満塁ホームランを狙うよりも、ポテンヒットや内野安打でもいいから出塁し、ときどき2塁打、3塁打を放つ。これを積み重ねるほうが現実的です。
商業出版である以上、著者も売る努力をしなければならないのです。