誰にでもビジネス書の
著者になれるチャンスはある

自分のノウハウや知識の価値をあなたは知っていますか?

「挫折」の経験が本のテーマになる

 

もうひとり、「弱み」を棚卸しして出版を果たした例を紹介しましょう。
『実践版30日で人を「育てる」技術』(秀和システム)を出版した西尾英樹さんは、中小・ベンチャー企業を顧客にもつ事業戦略コンサルタントとして活躍されています。
彼はかつて建築関係の職場で現場監督をしていたこともあって、著者スクールにやってきた当初は、「失敗しない家の選び方」をテーマに出版したいという希望をもっていました。
しかし、この手のテーマはさまざまな専門家が出版しているうえに、他の専門家に比べて彼のキャリアは少し見劣りするというのが正直な印象でした。また、コンサルタントとして独立してからの実績もまだ少なかったため、「事業戦略」をテーマにするのも難しい状況でした。そこで、いつものように「強み」と「弱み」を棚卸してもらうと、他の人がまねできないような驚くべき経歴が浮かび上がってきたのです。

 

 

彼は元競泳選手で、高校時代は神奈川県1位の成績を残し、全国でも8位のトップスイマーのひとりだったのです。専門は平泳ぎ、当時のライバルはオリンピック・金メダリストの北島康介。当たり前のように、金メダリストと同じ大会で競っていたのです。

 

西尾さんにとって水泳は、一番情熱と時間を注いできたものであると同時に、大きな「挫折」を経験した場所でした。
彼の前には常に金メダリストという最強スイマーが高い壁として立ちはだかっていたのですから……。
彼にとって水泳は封印してしまいたい過去の出来事だったのです。
しかし、そのような挫折は、限られた人しか経験できないことであり、そこには人に伝えられるノウハウやメッセージがあります。
さらに、突っ込んで話を聞いていくと、大学生のときは水泳コーチとして育成マニュアルをつくり、選手のモチベーションをアップさせることが得意だったとのこと。そして就職した建築会社で現場管理の責任者になってからは、その人材育成のメソッドを応用して部下に指導した結果、事業全体の売上が2倍以上アップしたこともわかりました。
そのような棚卸しから生まれたのが、「元トップアスリートが実践してきた30日で人を育てる技術」というテーマだったのです。

 

このように自分が「弱み」だと思っていたことでも、出版においては他の人が経験していない「強み」に変わることが往々にしてあります。

 

おそらく多くの人が、他の人を圧倒する「強み」がないと商業出版できないと信じ込んでいると思います。しかし、隠していたいような「弱み」が出版のテーマになることは少なくありません。
だからこそ、「強み」と同時に、「弱み」をすべて書き出して棚卸しすることが大切なのです(出版テーマの決め方を含めた出版企画書の作成方法は第6章で説明します)。